顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術はどういうときに算定?

算定要件

整形外科領域では、俗に表現される術式名と診療報酬上の術式名が一致しないものが多く、この手術はどの術式で算定すべきなのか?といった場面になることがありますよね

なかなか手ごわく、整形外科が難しいと言われる原因の一つだと思います。

そこで今回は、整形外科で行われる顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術について、どういう場面で算定すべきかを紹介します。

というのもこの点数は令和4年度診療報酬改定で新設されたものですが、それ以前から行われてきた術式で、従来は椎弓切除術で算定されてきたものかと思います。

従来からも算定していた事例が別の点数として新設された場合、今後はどう算定すべきでしょうか

 

<令和4年度診療報酬改定時点の点数>
K142-8 顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術 24,560点
K142 5 椎弓切除術 13,310点(1椎弓の場合)

点数は上記のとおりで、一見すると顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術のほうが高く請求できるため、収益的にはこちらを算定したいと思うかもしれません。

しかし、顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術は多椎弓加算は存在せず、何椎弓であっても24,560点となります。

一方、椎弓切除術であれば多椎弓加算があります

2椎弓であれば19,965点ですが、3椎弓の場合は26,620点となり、24,560点を超えます。4椎弓や5椎弓であればその差はさらに広がります。

つまり、3椎弓以上であれば顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術よりも椎弓切除術のほうが高い点数となります。

では、1~2椎弓のときは顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術で、3椎弓以上のときは椎弓切除術で算定したいと思いたくなりますが、そのような方法はよしとされるのでしょうか

 

また、複数手術に係る特例についてはどうでしょうか。

例えば、K142 2 後方又は後側方固定で第2~第3腰椎を固定し、隣接する第4腰椎椎弓を切除した場合、従来であれば32,890点+加算6,655点を算定できていました。

しかし今後は顕微鏡下で隣接部位の椎弓切除を行った場合、複数手術として顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術を算定することは認められるのでしょうか

なお、実際問題として、先の事例もこの事例も、3椎弓以上のような大きい範囲のときに顕微鏡下で実施することがあるのかどうかという観点はここでは考えないこととします。

 

さらにもう一つ、次のような事例はどうでしょうか。

腰椎椎間板ヘルニアの患者に対して椎間板摘出術を行う際、顕微鏡下で行った場合には椎間板摘出術で算定すべきなのか、顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術で算定すべきなのか、どちらでしょうか

なお、椎間板を顕微鏡下で摘出することもあれば、椎間板自体は顕微鏡は用いずに摘出し、その部位の椎弓を顕微鏡下で切除するという処理を施す場合があるようです。

 

以上をまとめると、照会内容としては次の観点となります。

①顕微鏡下で行った多椎弓への手術では、椎弓数ごとに算定方法を変えてよいか。
②顕微鏡下で隣接部位の椎弓切除を行った場合、複数手術として算定してもよいのか。それとも、多椎弓加算として椎弓切除術を算定してよいのか。
③椎間板摘出術を顕微鏡下で実施した場合、どの点数を算定すべきか。

 

これに対する回答は次の通りでした。

①顕微鏡下で行ったものはどの椎弓数でもK142-8 顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術で算定すること。
②複数手術としても、多椎弓加算としても算定できない。
③K134-2 椎間板摘出術(後方)で算定する。

 

①については予想通りではありました。

これがまかり通ると、振替請求と同等であり、不正請求とみなされることになると思います。

また、②については複数手術の特例が設定されていませんので、これも予想通りではありました。

つまり、①や②の結果としては、手術内容によってはこれまでより減収になる場合があるということです。

次回改定では、せめて複数手術の特例は設定してもらえるとありがたいですね。

③については、そもそも顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術が想定している手術内容ではない、ということですね。

 

今回は以上です。

実際の臨床の現場に詳しい方でしたら頓珍漢な疑義照会なのかもしれませんが、いざ請求を担当する者からすると、これまでも別の点数で算定していた術式が新設になった場合には頭を悩ます点だったかと思います。

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